紙芝居では、相変わらず難儀担当の帯刀さんが
体を張って頑張っています。
ですが江戸の昔には、それこそ江戸中の難儀を一人で
背負う、本物の「難儀担当」の帯刀さんが
いらっしゃったのです。
その名は、石出帯刀。
お手当ては三百石。
お住まいは、小伝馬町一丁目。
お仕事は、牢屋奉行。
そう、この方は、江戸の悪人たちを収容する
小伝馬町の牢獄を監督するお奉行様なのです。
この方、何が難儀といって、職業と名前が世襲制なのですよ。
つまり、石出家に生まれた長男は、ずーーーーっと
「牢屋奉行の石出帯刀さん」
ということになるのです。
今で言えば、刑務所の所長さん。
そりゃ、お仕事は大変だろうけど、生涯、職が保障されてて
結構なご身分じゃないの、と、つい思ってしまいます。
ですが…
問題は、この方のお住まいです。
なんと、石出帯刀さんのご自宅は、牢屋敷の中にあるのです。
現代に置き換えれば、刑務所の敷地内に自宅があるのです。
自宅住所、塀の中。
しかも、石出帯刀邸としての門や入り口はなく
出入りは牢屋敷の門から。
てことは…
学校から帰ってきた子供も、お買い物から帰ってきた奥方も
みんな、刑務所の重い門を開けてご帰還ということですよ。
うう~む…
しかも、牢屋敷の門の前では、ときどき「叩き刑」とかが
行われているんですよ。
ビシビシとシバかれている罪人の横を、「ただいまー」とか
言いながら子供が帰宅。
うわあああああ~~~
なんか複雑だぁ~~~
「叩き刑」は刑というより軽い罰だそうですが、それでもムシロの上に
褌いっちょでうつ伏せにされ、両手足を押さえつけられて
背中をビシビシやられてるんですよ。
ビジュアル的には、結構、すごいです。
ですが、お父さんの職場が見える環境、という意味では、案外
いいのかもしれない…
などと思ったのも束の間。
やはり牢屋敷は、そんなヤワな所ではなかったのです。
牢屋敷の中には、石出帯刀邸以外にも、牢屋敷で働く
同心やら下男やらの長屋があります。
石出様のお屋敷は当然、一番大きいのですが、問題はその場所。
石出邸の裏手…というか奥には、米蔵を挟んで「死罪場」があるのです。
昔の死罪と言えば、斬首です。
要するに、帯刀さんちの裏手では
割と頻繁に人の首が切り落とされていた、ということです。
ギャアァァァァ━(゚Д゚|||)━!!!!!!
普通、そういう場所は、お家から一番遠い所に置くでしょ!
なんで誰よりも近い所に住んでいるかな~石出様~。
手元の資料によると、斬りおとした首が落ちる穴の、更に屋敷寄りに
「様場」というのがありました。
「サマバ?」…はて、何だろうと思って読み進めていくと、少し先に
「様(ためし)場」とありました。
そう…そこは、首を刎ねた罪人の体で、刀の様(ため)し斬りをする
所だったんです。
(TДT|||)
石出邸と死罪場の間には蔵があるとはいえ、あの距離では聞こえる…
ずぇったいに聞こえる。
声とか…色々…。
…………怖すぎだろ!!
↑牢屋奉行ギャグ
P.S.
最後の最後に気付きましたが…これって「同心ネタ」じゃありませんでしたな~。